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人事にインタビュー!初めて転職する海外経験者の為の中途採用の秘訣

更新日:2018.1.16

今回のインタビュイー:平野タダシさん

今回のインタビュイー:平野タダシ

大学卒業後、時計を扱う商社に入社し、国内営業を8年間経験した頃、海外営業部門へ異動。 そこで8年間に渡り海外の新事業開発を担当、最後の2年間はアメリカの子会社に出向し現地で開発と販売を担当した。 帰国後はグローバルマーケティングの仕事をし、約4年間は持株会社の人事総務部に異動し部長に昇格。 そこでグループ全体の人事制度の整備、階層別研修、採用等を行う。 その後、製造関連のBtoB商社に転職し、約10年間総務部長を任された経験を持つ。 現在は英会話学習ソフト開発販売を行う会社で顧問をしている。

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海外経験が転職をする際に、経験をどう活かすかということにフォーカスし、ご自身も海外赴任の経験があり、大手企業で人事部長、総務部長を歴任され、中途採用、転職面接を数多く担当されていた平野さんに人事の目線からお話を伺いました。

 海外赴任の希望が強かった20代

これまでどのようなお仕事をされてこられたのですか?

“大学卒業後、すぐに時計で有名な商社に入社しました。もともと海外志望が強かったのですが、最初の配属は国内の営業で、関東~東海の時計宝飾店やデパートを回って時計を売っていました。国内営業を8年間経験した頃、社内で“海外トレーニー制度”の発足を機に即応募、残念ながら既にトレーニーの年齢ではなかったのですが、意欲を評価してもらい念願の海外営業部門へ異動することができました。そこでは8年間に渡り海外の新事業開発を担当、最後の2年間はアメリカの子会社に出向し現地で開発と販売を担当していました。

帰国後はずっとグローバルマーケティングの仕事をしておりましたが、最後の3~4年間は持株会社の人事総務部に異動し部長に昇格しました。そこではグループ全体の人事制度の整備、階層別研修、採用等を行ってきましたので、採用面接や新卒の入社研修で多くの学生や若い社員を見てきました。

その後、縁あって25年過ごした会社を離れ、それまでと全く勝手が違う製造関連のBtoB商社に転職しました。そちらでは約10年間総務部長を任されておりましたが、ちょうど会社が成長ステージで積極採用を行っていたこともあり、前社以上に採用面接に立ち会い、幹部採用の際には社長面接にも同席することもありました。” 

ファーストキャリアとして、その精密機械メーカーを選んだ理由は何ですか?

“販売する商品のブランドが世界的に認知されていて、その品質が海外でも非常にリスペクトされているからというのが理由です。私は文系ですから自分で物を作ることができません。何かを売るとしても、自信が持てない物を売るのは難しいと思ったのです。「この商品は本当に素晴らしい」と嘘をつかずに売ることができるものがいいと思い、国際的な信用があり高い技術力を持つ商品を販売する会社を選びました。

当時は英語もできませんでしたが、仮にすぐに海外の仕事ができなくても、そういうグループに所属していることで自分なりの満足感はあるだろうし、いずれは海外に出るチャンスもあるかもしれないと思っていました。実際に入社後、必ずしも英語を喋れる人だけが海外に配属されるのではないということも分かりましたので、頑張って成果を出して行けばいずれはチャンスがあると考えていました。”

英語よりも、海外赴任で重要なのは”信頼できる人”かどうか

海外で成果を出せる人材というのは、どういうスキルを持った人だと思いますか?

“まず英語で外国人とコミュニケーションを取るための“最低限”の英語は必要だと思います。そして「外国人と話すことを恐れない」という点も、海外の経験がある方の素晴らしい付加価値だと思います。英語ができても話せない人はたくさんいますから。

しかし、それはあくまでも付加価値に過ぎません。英語のレベルにかかわらず、まず「信頼できる人間かどうか」ということが一番重要だと思います。

相手に信用してもらえないと、相手も絶対に本音は言いませんし、お客様も商品を買ってくれません。これは国内海外に関係なく基本的な事だと思います。私は先輩に「時計を売る前にまずは自分を売らないとダメだ」と教えられました。実際に私が最初に営業に行った時には、しばらく会社名○○の「○○さん」と呼ばれましたが、先輩はちゃんと本人の名前で「△△さん」と呼ばれていました。

商品を売るよりもまず自分を買ってもらう、つまり自分の名前を呼ばれるようにならなければいけない。その上で初めて商品を買ってもらえるということを知りました。信用してもらえれば、私が薦める商品を買ってもらえるのです。どれだけ頭が良くても、口先だけ上手だったり言うことがコロコロ変わったりする人はダメです。相手から見て「人として信頼できるのか」、それが一番の判断基準で、その上で英語ができる、海外経験があるという付加価値が活きるのだと思います。”

企業が転職/中途採用の面接で気を付けていること

転職/中途採用の選考において、人事部と採用する部署の役割の違いを教えてください。

“採用する各部署では実際にその人の能力とか、その人に何ができるのか、何を任せられるのかを見ていたと思います。一方、人事部はその人が「この会社でやっていけるのか」という点を見ていたと思います。

ちなみに私のいた専門商社では、採用する部署、人事の面接に加えて、他の部署の人間が面接を行い、第三者の中立的な立場で適性を評価していました。採用する部署が猫の手でも借りたい様な状態であれば、「この人でもいいかな…」という甘い見方が出てしまうこともるからです。そして担当役員がこれらのすべての評価を基に総合的に採用可否を判断するというやり方でした。”

企業も求職者どちらもミスマッチが無いことを望んでいると思いますが、ミスマッチを防ぐために、どのようなところに気を付けて採用を行っていましたか?

“「その人をよく観る」ということに尽きると思います。複数の人間が面接をして、評価をして、最後は合議で判断するのはそのためです。複数の目を通して観ることで、ミスマッチのリスクを減らしていきます。

私自身は面接で候補者に「会社に何を期待しているのか」、「この会社で働くことで自分がどうなりたいのか」を確認するようにしていました。それは現在の会社のベクトルがその人の期待に応えられるのかを判断するためです。どんな社員でも入社直後は期待に応えようとモチベーション高く働いてくれますが、社員と会社の間で価値観や期待にズレがある場合、いずれモチベーションは低下し、最悪の場合は退職…という事態にもなりかねません。それは本人にとっても会社にとってもとても大きな損失です。

また、応募してくる候補者はやはり“入りたい”わけで、基本的にこちらに良く思われようとする傾向があります。なので、候補者の回答がロジカルで、話していることに矛盾がないかという点にも注意し、可能な限り候補者の本音を聞き出すようにしていました。”

新卒と中途の採用で何か異なる部分はありますか?

“新卒というのは社会人としての経験がありませんから、採用する側にも“親心”のようなものが芽生えます。どんな学生にでもポテンシャルがありますから、会社として「育ててみたい」という気持ちになれるかどうかだと思います。

もちろん、本人に成長する気がないとダメですが、こちらが育てたいという気持ちになれるかが重要です。特に人事部長の頃は、新卒が自分の子どもに近い年代だったので、なおさらそういう気持ちが強かったですね。

一方、中途の採用では「今まで何をしてきたのか」というところにフォーカスを当てます。職務経歴書の記述から興味がある部分について「それはどんな背景で、あなたはどんな行動をして、どんなことを学んだのか」ということを具体的に聞くようにしていました。

本人は実績や成果など自分が誇れることを話す準備をしていますので、むしろ必ず聞くようにしていたのは、困ったこと、失敗したこと、苦労したこと、言ってみれば修羅場のような経験についてでした。仕事に限らず今まで生きてきた中で、どういう修羅場があったのか、その時にどう考えて、どう克服したのかということです。

本人自身がやってきたことには絶対に再現性がありますから、新しい会社でも困難な状況に直面した時、課題に立ち向かっている時に、必ず自分で考え、自分で乗り越えることができるはずです。自身の修羅場と言いながら、実はチームとして、また誰かの助けを借りて乗り切ったとか、環境が変わり結果として乗り越えられたとか、そんな話は修羅場でも何でもありません。事の大小にかかわらず、自身の修羅場を語れない人は「ダメだな」と判断していました。”

修羅場が仕事以外のことでも構わないのですか?

“構いません。会社では業務以外の事、例えば職場での人間関係のトラブル、お客様のクレーム対応等、様々な問題が発生します。つまり毎日が小さな修羅場の連続です。ですから、そういう時にどう対処できるかが重要です。私としては、問題に直面した際に、自分の視点で考えるのか、それとも相手の立場に立てるかどうかということを重視しました。修羅場には必ず相手が存在するからです。

企画でも営業でも、人間関係でもクレーム対応でも、相手の立場を理解することが重要です。そうしないと解決策は絶対に出てこないのです。お客様への対応であれば、基本的にはこちらから相手の立場に立たなければ相手の抱える問題は解決しません。

こちらの事情を100%主張する、または相手の要求を受け入れるだけではなく、事態の背景に何があるのか?相手がなぜそう主張するのか?それを理解することで、「それならこうすれば良いのでは」と提案できるのです。そうすることで、双方の立場を尊重した上での真の解決を導くことができます。なので、面接で修羅場の経験について聞く中で、その人がそういう視点を持てたのかどうか、それ以外にも自分で何か学びを得られたのを確認していました。

採用面接の際、候補者の回答がロジカルで話している内容が首尾一貫して矛盾がないかという点にも注意したと申し上げましたが、よく聞かれたことに答えずに、ポイントがずれていても話を続ける人がいます。そういう人は「この人とはコミュニケーションを取るのは難しいな」と感じます。「自分の意見を主張するけど、相手の立場に立てない人」という判断になります。”

職務経歴書ではどの部分を注意深く見ていましたか?

“職務経歴書は基本的に良いことしか書いていませんので、実績が具体的に書いてあれば、そこを注意深く見ていました。ただ単に、「○○会社で△△の業務をしていました」と非常にシンプルに書いている場合、こちらから「それはどういうことなのか?」と聞くようにしていました。若い社員は全てを任されることはあり得ないわけですよ。本人は「私が成し遂げました」と胸を張りますが、本当は成し遂げた組織の一員として、与えられた一部のタスクをこなした…ということも多々あります。なので、「あなたが何をしたのか?」という点をより具体的に聞くようにしていました。”

特に20代の若い人は、履歴書や職務経歴書に実績をどこまで書いたらいいか頭を悩ませると思います。自分が主体的にやったことを書くのがベストでしょうか?

“自分を売り込みたい側にしてみれば、できるだけ良いことを書きたいですよね。私でもそうしますから、それは否定できません。それが本人が主体的に成し遂げた実績なのか、組織としての実績なのかは、聞く側が注意して探っていくということでいいと思っています。むしろ面接を受ける側は、「ここを聞いてほしい」ということを堂々と書けばいいのです。

自信を持ってやってきたことを書けば、面接する側はそこをポイントに聞いてきます。やってないことを偉そうに書くと、突っ込まれてボロが出ますから、嘘がないことが前提で自分として誇れることを書く。自分の付加価値になりうることがあれば、それは書けばいいと思います。”

逆質問ができるかどうかも重要なポイント

面接では逆質問をしていますか?また、どのような質問を期待していますか?

“私は最後に必ず逆質問を聞くようにしていました。その時に、まず質問を用意しているかということは評価のポイントでした。

予め質問を用意するということも、その会社に対する誠意だと思います。特に新卒採用の学生は何社も受けているので、極端な話、第一志望でなくても内定が欲しくて面接に臨む人もいます。本当にその会社で働きたいのか?人間は正直ですから、本当に受かりたかったらその会社のことを良く調べますよね。

また、面接の中で面接官から得られた情報に関する質問も、相手の話をよく聞いているという点で評価できます。”

むしろマイナスな印象を与えてしまうような質問はありますか?

“逆質問をした時に、勤務条件や研修制度、福利厚生等、ありきたりなことを聞いてくる人には、マイナスポイントを付けていました。その人は恐らく他の会社にも同じ質問をするのでしょう。その人自身がどこまで考えて質問しているのかという点も評価ポイントです。

ですので、そもそも質問がないのはNGですよね。この会社に入って、ある程度の期間勤めるかも知れないのに本当に質問が無いの?そんなにこの会社に興味がないの?という話ですから、逆質問を求められて「ありません」「大丈夫です」という方は疑問に思います。”

海外経験を持つ転職 / 中途採用希望者に期待することは

採用に限定せず、帰国子女や海外の大学・大学院を卒業した人と働いた経験はありますか?そのような方には、どのような活躍を期待していますか?

“多くの留学経験者を採用し、一緒に働いてきましたが、すでに申し上げました通り、まずは本人が人としてどうなのか?信頼の置ける人か?一緒に戦っていける人か?そういった点が最も大事になります。その前提で、海外経験がある方は間違いなくいろいろな修羅場をくぐっていますし、そもそも海外に行こうと決めた時点で勇気・決断力・実行力があると判断できますので、彼らの付加価値として評価していました。

ビジネスで使用する英語はちゃんと勉強した人なら何とかなるものです。ですからむしろ英語ができるかどうかより、彼らが海外で思うようにいかなかった時や壁にぶち当たった時に、自分の力で乗り越えてきた経験やそこから得た学びを、それぞれの職務の中で活かし、会社のグローバルな成長に貢献してもらえることを期待していました。”