留学・海外就業経験者、帰国子女、ハーフ専門の転職エージェント

MENU
CLOSE

15歳からの夢を、15 年かけて叶えた。面接で聞かれる「なぜ前職はここ?」への答えとは。<インタビュー後編>

更新日:2021.5.2

石原加奈子さん

石原加奈子

外資系生命保険会社に5年間勤めた後、イギリスのイーストアングリア大学大学院に留学。教育開発学を専攻し、新興国の教育におけるジェンダー問題や女子教育について学ぶ。帰国後に転職し、現在の職位はプロジェクト・コンサルタント。主に国際協力機構(JICA)の教育分野の案件形成調査、セクター調査等の各種調査業務のほか、技術協力プロジェクトでの技術指導及び、プロジェクトマネジメントに関わる業務に従事している。

留学経験者専門の転職エージェント『Beyond Border』。

今回の転職経験者インタビューは、5年間の社会人経験を経てイギリスのノーリッチに大学院留学をされ、現在開発カウンセラーとして活躍中の石原加奈子さん(以下、石原さん)の記事第二弾。

前編をまだ読んでいない方はこちら。

今回の後編では、転職活動のスケジュールや面接で聞かれた内容、転職先を選んだ理由など、実際の転職活動中の様子を具体的に伺います。

転職までのタイムライン

国際協力業界に興味があったものの、新卒では外資系生命保険会社に就職した石原さん。業界ではほとんどの場合

修士号と英語力が求められており、必然的に大学院留学が視野に入ってきました。

石原さんは5年勤めた前職を辞め、単身イギリスへ。留学中にも就職活動をしていましたが、4月のキャリアイベント以降は大学の勉強に集中しました。

転職を考え始めたときから実際の転職活動のスケジュールまで、参考にしてみてください。

1. 新卒~留学前: 新卒から予定していた転職

石原さんは、前職の外資系生命保険会社の保険金課で副主任まで勤めています。しかし、入社したときから転職を考えていたと笑う石原さん。

“転職先は日本企業で考えていたので、その前に社会人経験を積むため、最低3年から5年は、最初の会社で働こうと思っていました。3年経った時に大学院留学を検討し始めたんですが、今転職先で考えてみると5年の社会人経験というのは転職先の人事が経験値を判断するのにも、適当な期間なので良かったのかなと思います。”

ご自身の結婚を控えながらも、結婚まで前職に残ったり、留学に行かなかったりという選択肢はなかったそうです。幸いなことに、家庭環境の変化など留学や転職を阻む事情にもぶつかることなく、資金も貯まったことで、留学と転職の決断もできました。

恋人がいて、留学をするとどうしても遠距離になってしまいますが、日本の大学院に入って英語力は国内で磨いていくという選択肢はありませんでしたか。

“大学の時にすごく留学をしたかったんですが、色々事情があってできなくて。

英語は高校生のとき通っていた予備校にいるときからすごく好きな科目で得意だったり、母も自宅の英会話教室の先生、という環境で育ったんですけど、やっぱり流暢に話せるようになるにはどうしても壁があって、これは行くしかないと思ったのが一つ。

あとは海外の生活に憧れていたので。1年でも海外で生活したいなと思って、留学にしました。”

国際協力に関心を持ちながらも、新卒では保険会社を選んだ石原さん。転職活動の際にも、「前職はなぜ保険会社だったんですか」と聞かれたそうです。彼女の中では、両業界に共通しているポリシーがありました。

“国際協力の仕事って困ってる人に手を差し伸べるとか、困ってる状況にある人の状況を改善するという仕事だと思うんです。

就活をして国際協力関係が全部ダメだったときに、じゃあ民間で働こうって思ったんです。その中でどれが少なくとも関連してるかって考えて、わたしはその困ってる状況にある人を直接的に助けるという意味で保険会社に入りました。

綺麗事ですけど、私のいた生命保険会社はガン保険とか医療保険がメインだったので、亡くなった人向けの保険金だけではなくて、ガンや病気で治療する間にお金がなくて困っている人に給付金をお支払いする仕事をしていました。”

実際に配属された部署も、バックオフィスなどではなく直接お客様に給付金をお支払いする部署で、お客さま対応もたくさんしてきたそうです。電話や手紙で感謝されるということも少なからずあったそう。

“「困っている状況にある人を直接的にサポートするという意味では共通はしていました」と、答えました。”

2. 留学期間~帰国後

イギリスの大学院は、9月から始まり1年間で修士論文まで提出します。石原さんはイギリスに10ヶ月滞在し、夏期にはインターンシップのためバングラデシュに渡航。インターン期間の2ヶ月分修士論文の締め切りを延長し、日本で残りを書き上げ10月末に提出しました。

大学院の学業と就職活動の両立にはとても苦労したそうで、留学生活の後半は学年末試験や修士論文執筆に専念。本格的に転職活動を再開したのは、修士論文提出後の11月のことでした。

書類やレジュメを実際に送り出したのはいつくらいからですか。

“JICAと他(国際協力業界以外)の業界は締め切りが早かったので、イギリスで3社くらい出しました。ロンドンで4月にキャリアフェアがあったので、それに行くために応募書類を出して、面接は2社受けました。2社とも落ちていますけど。そのあとは、両立はできないと思ったので1回止めました。”

現職の開発コンサル業界に書類を提出し始めたのは、修士論文の提出後でした。留学中に問い合わせをした2社に「帰国後に書類を出してください」と言われたため、帰国後まで待つことになったそうです。

石原さんの留学と転職活動時期をまとめると、以下のようなスケジュールになります。大学院留学を検討している方は参考にしてみてください。

2014年

  9月: 大学院入学

2015年

  1月: 転職活動準備開始

  4月: ロンドンでキャリアフォーラム·就活停止

  8月: バングラデシュでインターン開始

  10月: 修士論文提出

  11月: 転職活動を本格的に再開

2016年

  2月: 転職活動終了

 

異業種に応募するも「最終的には開発コンサル」一直線

アメリカでは、留学生の就職活動場所として11月のボストンキャリアフォーラムが有名ですが、イギリスではロンドンで4月ごろに小規模のイベントが2つ開催されます。

 

バルジョブロンドングランデ

ロンドンキャリアフォーラム 

開発コンサルと国際協力関連と、他にどういうところに出したんですか?

“海外に行きたかったので、商社1社と、前職が生命保険会社なので、受かりやすいかなというのがあって生命保険会社1社ですね。帰ってからビジネスコンサル会社にも1社か2社出してます。”

石原さんは、2015年4月のフェアでJICAと他業界の企業2社に応募しました。石原さんの場合はSkype面接はなく、ロンドンで直接面接。商社は、「英語が使えそう」「海外で仕事ができそう」と試しに受けたものだったそうですが、ビジネスカウンセラーは会社·部署によっては国際団体の案件を受注しています。

国際協力に従事したいと考えている場合、他業界で就職すると希望通りの仕事ができるかどうかは配属部署に左右されてしまう上、直接的なサポートができる可能性は高くないということですが、関わり方を探れば開発業界のみに絞る必要はないのかもしれません。

しかし石原さんは、他業界も見てみたものの、留学の目的であり長年の夢でもあった開発業界·開発コンサルで「最終的には職を得たかった」と語ります。

石原さんが、転職活動で仕事を選ぶ際に重視された点は以下の5つ。

  1. 国際協力分野で活躍する民間企業であること
  2. 産休、育休の取りやすい環境のある会社であること
  3. 長く続けられる会社であること
  4. 国際協力業界で実績のある会社であること
  5. 日常的に英語を使った仕事ができること

“仮にそのビジネスカウンセラーか商社に内定をもらっていたとしても、多分そのまま就活を続けていて、開発コンサルで内定をもらうまではその内定を断ったり保留したりしたと思います。”

学業と転職活動の両立はしない。1つずつ専念して、修士号と内定を獲得

1年間の留学ということは、すぐに転職先を探す必要性が出てきます。先述のように石原さんはイギリス滞在中にも就職活動をしていましたが、4月のイベント以降は大学の勉強に集中しました。

学業と転職活動を両立させるのが大変だったそうですが、学業はしっかりとやりたいという意味でも、いま振り返ってみて両立はやっぱり無理だったと思いますか。それとも、こんなことを事前にしておけば両立できたかなというのはありますか。

“わたしは両立は難しかったと思います。やっている人はいましたけど、私には無理だなと思いました。英語がいっぱいいっぱいですので。

でも1つ挙げるなら、CVの作成はすごく時間がかかるので、それを早い段階でやっておけば、ちょっとは楽だったかもしれません。日本語CVと英文CVを両方作って行って、出すだけの状態になっていれば。”

留学中は、もちろん勉強に忙しくならざるを得ません。また、コースメイトやルームメイトとの交流や旅行など、留学中でしか経験できないようなこともたくさんあります。そんな中で履歴書を1から作成し、企業研究をし、本格的に就職活動をしようとなると、時間はいくらあっても足りません。

しかし、ボストンキャリアフォーラムやロンドンキャリアフォーラムでの外資系企業の応募項目には、日本語だけでなく英語での履歴書(CV)を求められていることも珍しくありません。渡航前でも日本でできることは済ませておくのが賢い時間の使い方といえます。

石原さんが、無理に両立を目指さず学業に専念できた理由の1つは、石原さんが新卒ではなく中途採用の転職者だったからだそうです。日本の就職活動の仕組みにおいて、新卒者は卒業と就職の間があいてしまうと不利になってしまいがちですが、中途採用者はある程度の融通が利きます。彼女はその点を踏まえ、勉強をとったとおっしゃいました。

また、留学を挟まない一般の転職活動に置き換えてみても、転職者は現職と転職活動の両立をすることになります。その点についても、石原さんは日本の履歴書文化に言及しました。

仕事をしながら転職活動をするのと、辞めてから転職活動をするのとでは、どちらがいいと思われますか。

“一概に言えませんが、転職先が日本の会社だった場合、日本の固有の文化があると思うんですよ。履歴書の間があいていないこと。綺麗な履歴書であることが1つのステータスになっている気がするので、それを気にする場合は仕事しながら就職活動します。

でも転職先が全然そういうことを気にしなくていい会社だったり海外だったりしたら、辞めて時間をおいて転職活動します。”

 

ナマの情報や業界専用ポータルサイトを活かした、転職活動の情報収集

国際協力業界の就職情報や企業情報は、他業界に比べて非常に限られており、石原さんも情報収集に苦労したそうです。最初は大手の転職エージェントを使っていた彼女。しかし、国際協力業界で転職活動をするにあたり、

国際協力業界がそもそも全く引っかからない

フィルターをかけるにしても業界のフィルターがないので探しづらい

たくさんの企業が、大きなエージェントには登録すらしていない

と、効率の悪い思いをすることになってしまいました。限られたマーケットだと、大手サイトでフィルターをかける時点から苦労してしまうのですね。

そこで彼女は、実際に業界で活躍する人から直接話を聞いた方が有用な情報が得られると考え、大学院在学中にバングラデシュの国際NGOでインターンシップをした際に、現地で活躍する日本人と積極的に交流し、情報収集や人脈作りに励みました。

この時に築いた人脈がのちの就職活動に大いに役立ち、転職活動の際に実際に応募した企業は、半分くらいはそのときに得た情報を参考にしたそうです。

それからインターネット。参考にしたのは、会社のホームページや、JICAが運営しているPARTNER」という国際協力業界専門のポータルサイトです。

”「PARTNER」を使うのが一番効率がいいと後から分かってきて、そこから転職エージェントは使っていないですね。

あとは、新卒で国際協力業界の企業の情報収集をしていたときの資料がかなり取ってあって、ずいぶん役に立ちました。”

このように、業界特有の特徴は考慮しなければいけませんが、転職活動のはじめはそれも分からず、効率の悪いことになってしまうかもしれません。業界や自分の持っているスキルの活かし方について、全貌をしっかり把握して効率よく転職活動を行うためにも、転職の専門知識を持ったカウンセラーに個人的に相談してみるのはいかがでしょうか。

転職エージェントを使うメリットとは

カウンセリングを受けてみる(無料)

ワークライフバランスが課題

石原さんが転職活動を経て現在の会社に決めた最大の理由は、仕事を選ぶ際に重視していた点や会社の雰囲気を総合的に検討した結果でした。

業界で実績があって、ある程度規模が大きい会社であること。育休産休を活用しスマートに働いている女性がたくさんいること。この後自分が長年働いていける環境か。

新卒のときには「入社したときから転職しようと思っていた」と語っていた彼女でしたが、転職活動の際には、「2~3年でもう1回転職するんじゃなくて、この会社で長期的に働こうと思って転職した」そうです。

インタビュー時には30歳で、留学から帰国した昨年には結婚もされました。子どもも欲しいし、仕事は続けたい。必然的に、ワークライフバランスという働き方が職場選択のポイントになりました。

“会社のママさんでコンサルやってる人もいて、いろんな制約があるようには見えますけれど、子育てしながらも仕事は続けたいと思っています。子どもに自慢できるような仕事がしたい。”

職場の女性の中には、旦那さんが主夫をしていたり、ご両親に子どもの世話を頼んだりしている家庭もあるそうです。「ワークライフバランス」は、家庭を持ちながら仕事に情熱を注ぐ開発業界の人々と、その家族にとってずっとついて回る問題かもしれません。

将来の夢はありますか

“まだ全然専門があるうちには入らないので、「これが専門です」と言える自分の分野を早く作りたいな。この仕事って自分で勉強していかないと誰も教えてくれない業界なので、これも個人で勉強しなきゃいけないっていうのが最近わかりました。

研修を受けるとか本を読むとかまた大学に戻るとか、いろんな方法で自分の専門性を極めて、仕事がとってこれるようになれたらいいなと思ってます。”

大学院で開発教育学を専攻し、現在も教育開発部に従事する石原さん。国際協力業界で教育を「専門」と呼べるようになるには、さらなる勉強や知識が必要だと言います。専門性を高めて、エキスパートという存在になっていくという目標地点ができると、仕事·家庭·勉強の両立が求められます。

15歳からの夢を追い続けて社会人経験を積み、イギリス留学を経て転職。30歳直前にその夢を叶え、仕事でもプライベートでもさらなる高みを目指し走り続ける石原さん。国際協力の世界を舞台に働く姿に憧れる若者のロールモデルになるはずです。

前編をまだ読んでいない方はこちら。